【知っておきたい 信用調査・与信管理のよろず知識】
 第4回:法的整理と準則型私的整理

2026年6月12日

 

この連載シリーズコラム【知っておきたい 信用調査・与信管理のよろず知識】では、主に定性分析に役立つ知識を中心に信用調査や与信管理に関する様々な知識やノウハウをご紹介しています。なお、定量分析(財務分析)については、別の連載シリーズ【与信管理における定量分析の基本】で解説しています。

また、本連載シリーズは、トーショーの公式YouTubeにて配信している【シリーズ動画『信用調査・与信管理 よろず話』】ともリンクした内容となっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください

>>#06:法的整理と準則型私的整理(2025年11月配信)

 

<目次>

■清算型の法的整理:破産手続
■清算型の法的整理:特別清算
■再建型の法的整理:民事再生
■再建型の法的整理:会社更生
■準則型私的整理について

 

前回、企業の「倒産」について、法的整理・私的整理、清算型・再建型に分類して、その全体像を概説しました。今回は、破産法や民事再生法などの法的整理の基本的な知識と、近年活用が広がってきている準則型の私的整理について取り上げます。

 

■清算型の法的整理:破産手続

法人の破産手続を簡単に説明すると、破産法という法律に基づいて、裁判所の監督のもと債務者の残りの財産を債権者に公平に分配してから、最終的に法人を消滅させていく手続です。なお、破産は法人だけでなく個人も対象となります。

破産手続の流れ

上図は基本的な流れですが、会社が「支払不能」や「債務超過」になって事業の継続が不能になったと代表者が判断した上で、一般的には弁護士を申立代理人として裁判所に破産を申し立てます。

「自己破産」という言葉がありますが、これは上記のように債務者自身、つまり会社の場合は代表者が破産を申し立てることを指します(※申立代理人を立てた場合も含む)。日本の場合、破産手続のほとんどが自己破産です。

かつては、支払いをしない債務者に対して債権者が破産を申し立てる「第三者破産」が主流の時代もありました。海外ではそれが普通という国もあり、現在の日本でも稀に債権者が破産を申し立てることもあります。

また、破産手続を含む法的整理は費用が相当かかりますので、かつてはそこまで多くなく、倒産は私的整理が大半を占めていました。2000年に東京地裁で、少額管財という制度ができて費用が抑えられるようになり、それ以来中小規模の破産手続が一般化しました。

破産の申し立てが裁判所の審理で認められると手続の開始決定がなされて、裁判所が選任した破産管財人による財産の調査や換価などが行われます。最終的に債権者に配当をしたうえで手続が終結となります。

破産手続においては、一般の無担保債権者への配当はわずか数%程度ということが普通で、全く配当がない(ゼロ配当)という場合もあります。税金や従業員への給料などが優先債権として扱われますので、わずかに残った財産を分配する形となるのが通例です。

 

■清算型の法的整理:特別清算

特別清算手続は馴染みのない人が多いと思いますが、これは「会社法」の中で定められている法的整理の手続です。株式会社のみに適用されます。

実際、この手続が使われる数は破産手続に比較すると少ないのですが、一方でニュースになるような大型債務整理で、この手続が使われることがあります。たとえば、パナソニックグループがプラズマディスプレイの子会社を清算するときに特別清算を利用していました。また、三菱重工グループが国産ジェット機事業の撤退にこの手続を利用して、子会社を清算しました。

手続が厳格な破産に比べて、特別清算は私的整理に近い制度でもあり、裁判所の許可によって少額債権を弁済し債権者を減らしたり、債権者との協議によって柔軟に債務整理を進めることができる手続です。そのため比較的大きな企業グループにおいて、業績不振の子会社を清算する際などに使われるケースが多いです。

また、「特別清算」は倒産手続としての一般的な認知度が低く、「破産」という言葉にくらべてネガティブなイメージがつきづらいということも、大企業等の子会社清算で利用される、一つの動機になっていると考えられます。

なお、今回は詳細な説明を割愛しますが、近年の準則型私的整理スキームの中で「第二会社方式」という手法がとられるケースが増えています。事業を別の会社へ移したうえで旧会社を清算するのですが、この際に特別清算が利用されることが多くなっています。

 

■再建型の法的整理:民事再生

再建型の法的整理は、裁判所の監督のもと債権者の同意を得て債務を整理することで事業再生をしていくことを目的とした手続です。当然、倒産手続ですので、一般の債権者がもともと有していた債権全部の弁済を受けられるわけではないのですが、破産させるよりも再建させるほうがより多くの配当を得られるとすれば、債権者にとってもメリットがあるということになり、再建型の法的整理を選択する合理性があります。

民事再生法は、もともとあった和議法という法律の改正として2000年に始まった比較的新しい法律です。基本的には中小企業や個人など、小規模な再生案件を想定して作られた法律ですが、後で説明する会社更生法よりも使い勝手がよいと判断されることも多く、実際には大企業の倒産も含めて企業規模を問わず使われています。

民事再生手続きの流れ

民事再生手続では、管財人が選任されるケースは少なく、手続を裁判所に代わり監督する役割として監督委員が選任されます。

実際の民事再生手続では、再建型といっても元の経営陣が残って単独で自力再建をするケースは少なく、新たなスポンサー企業に事業やブランドなどを引き継いでもらい、従来の企業自体は清算してしまうケースも多いです。逆に破産手続でも一部の事業を譲渡している場合などは、その事業が存続しているケースもあり、倒産手続における清算型と再建型の境界がはっきりしないケースも増えてきました。

 

■再建型の法的整理:会社更生

会社更生法は株式会社のみに適用されます。会社更生手続では担保の実行にも一定の制約があったり、手続が非常に厳格で時間も費用もかかりますので、一部の例外を除き大企業の倒産事件で利用されます。最も有名なのは、JAL(日本航空)の倒産事件で、ご存じの方が多いかと思います。

ただ、2025年に東京地裁で、「小規模会社更生」制度の運用が始まり、今後は小規模な会社更生事件が増える可能性もあります。

 

■準則型私的整理について

民事再生法などの再建型の倒産手続は、とりかえしのつかなくなる前の早期再生を狙いとして作られた法律で、破産のように「支払不能」や「債務超過」に至る前に申し立てが可能です。しかし、法的整理であることには変わりはなく、それを裁判所に申し立てると、その企業が「倒産状態である」ということがオープンになってしまい、信用が失墜して従来の取引先が離反してしまったり、商取引が円滑に継続できなくなってしまうケースがあるなどデメリットもあります。

一方で、旧来型の私的整理の場合には法的な制約がないため不平等が生じたり、多数の利害関係者の調整が困難で、こちらも早期の事業再生には障害があります。そこで近年、多種多様に整備されてきたのが、一定のルールやガイドラインに沿って行われる準則型私的整理手続です。

最も古いものは2001年に策定された「私的整理に関するガイドライン」で今はほとんど使われていないのですが、現在ある各種の準則型私的整理手続の原型となっています。近時においては、「事業再生ADR」という制度が多く使われていて、これは比較的規模の大きな企業の再生案件に使われています。中小企業向けには、「中小企業活性化協議会」(以前の名称は「中小企業再生支援協議会」)の再生スキームが多く使われています。

その他にも様々な枠組みができていますが、REVIC(㈱地域経済活性化支援機構)の再生スキームは出資機能を持っているのが特徴です。現在、名門繊維企業のユニチカがこのREVICで再生中です。新しい制度では、「中小企業の事業再生等に関するガイドライン」というものがありますが、再生だけでなく廃業に向けた債務整理についても定めているところが大きな特徴となっています。

このような形で多種多様な準則型私的整理の枠組ができているのですが、いずれも原則的には銀行などの金融債務を整理の対象として非公開で行われ、一般の仕入先への買掛債務は整理の対象外となっています。このことによって、商取引における信用棄損を防いで早期再生を図ることになっています。

ただし、これらの準則型私的整理は債権者である銀行等の金融機関の全会一致が原則です。調整がうまくいかず一部の金融機関から同意が得られなければ、法的整理に移行することになります。従って、与信管理の視点ではこれら準則型私的整理の手続も、倒産手続に準じるものとして認識しておく必要があります。

ニュースで見た方もいると思いますが、自動車部品大手のマレリグループも、最初は事業再生ADRを申請したのですが、外資系銀行の同意が得られずに民事再生法に移行しています。

なお、新しい法律で「早期事業再生法」という多数決で私的整理を成立させる新しい制度もでき、2026年中の施行が予定されています。

各種倒産手続きの形態

 

■YouTubeでも詳しく解説!

本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【シリーズ動画『信用調査・与信管理 よろず話』】ともリンクした内容になっています。動画ではより詳しい解説をしていますので、以下のリンクから動画を是非ご視聴ください。

#06:法的整理と準則型私的整理(2025年11月配信)サムネイル>>#06:法的整理と準則型私的整理(2025年11月配信)

 

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