2026年5月15日
決算書の見方や財務分析について記載された書籍はたくさんありますが、与信管理目線に特化して、必要な知識を丁寧に解説したものは多くありません。この【与信管理における定量分析の基本】シリーズでは、与信管理の初心者が、決算書の見方やそのために必要な最低限の会計知識を含め理解できるように、詳しく解説いたします。第26回は「与信管理担当者のための税務基礎知識(2)」と題して、中小企業の決算書理解に必要な税務の知識の続きとして、会計と税務の考え方の違い、特に会計上の利益と課税所得の違いや、その計算方法について解説しています。
トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。
>>第64回:会計と税務の違いを理解する(2023年11月配信)
>>第65回:与信管理担当者が知っておきたいその他税務用語(2023年11月配信)
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<目次> ■会計と税務の違い |
■会計と税務の違い
会計上の利益と税務上の所得は似て非なるもの
法人税は「所得(課税所得)」という法人税法上の儲けに課税されます。会計上の儲けである「利益」とは、似て非なるものです。会計でP/Lを作成する目的は、債権者や株主など利害関係者に対して正しい経営成績を報告することですが、税務当局が申告書を作成させる目的は、適正・公平な課税を実施することです。
会計上の利益(損益)は収益から費用を差し引いて求めますが、税務上の所得は益金から損金を差し引いて求めます。収益と益金、費用と損金は、会計処理が一般の会計基準に従っていれば大部分で一致します。しかし、会計と税務の目的の違いから一部は食い違いが生じます。例えば、節税目的で交際費などを派手に浪費して所得を意図的に減らすようなことを無制限に認めたら、適正・公平な課税が実現できません。この場合、会計上は実際に使った分を交際費として計上すべきですが、税務署としてはそのまま税務上の損金としては認められないということです。

そこで、税務申告における課税所得の計算方法は、会計上の利益をベースに、会計と税務が不一致となる部分だけ調整(加減算)することで求めます。今後の回で説明しますが、法人税申告書の「別表四」はこの調整のプロセスを記載する資料で、いわば税務上の損益計算書のようなものです。調整項目は4種類です。

4つの調整項目と加算と減算の代表例
「益金算入」とは、会計上の収益ではないが、税務上は益金となるもので、課税所得への加算要素となります。実際には、あまり該当する項目はなく、売上高の計上漏れがあった場合などに限られるようです。
「損金不算入」とは、会計上は費用であるが、税務上は損金と認められないもので、課税所得への加算要因となります。税務調整はこの損金不算入の項目が最も多く、前項で紹介した交際費などが代表例で、税務上損金として認められる額には限度があります(※交際費の限度額は企業規模によって異なります)。交際費以外にも、減価償却の限度超過額、貸倒引当金の繰入限度超過額、寄付金、過大な役員報酬など様々です。
「益金不算入」とは、会計上は収益であるが、税務上は益金としなくてもよいもので、課税所得への減算要因となります。代表例としては、受取配当金の益金不算入があります。これは配当側の企業ですでに課税されているため、二重課税となるのを防ぐための措置です。
「損金算入」とは、会計上の費用ではないが、税務上は損金として認められるもので、課税所得への減算要因となります。代表例は繰越欠損金の損金算入や、減価償却費の当期認容(前期以前に限度超過で認められなかったもののうち、当期において損金算入が認められるもの)などがあります。
減価償却や貸倒引当金の過小計上は税務上は適法、会計上は粉飾!
少し横道に反れますが、法人税法では減価償却費や貸倒引当金について認められる限度額の範囲内で計上すればよく、税務署からすれば「計上してもしなくても、限度額の範囲でどうぞご自由に」というスタンスです。計上しなければ、その分は税収が増えますので。一方、正しい経営成績を示す必要のある損益計算書(会計側)では、利益の過大計上は粉飾ですから、減価償却費や貸倒引当金の計上不足は粉飾として捉える必要があります。
■会社の税金に関するその他知識・用語
欠損金の繰越控除
取引先の決算書を見ていて、利益が十分に出ているのに「法人税・住民税及び事業税」がごくわずかしか計上されていないことを見かけると思います。これは、前期以前からの税務上の赤字の累積額「欠損金」が、当期の利益の額よりも多く残っている場合にそうなります。
欠損金の繰越控除制度とは、過去に発生した欠損金を一定期間繰り越して、黒字になった際に課税所得と相殺できる制度です。繰り越せる期間は、かつては7年でしたが、税制改正により最近は9年→10年と長くなっています。繰越限度額も設定されていますが、税法上の中小法人等では、繰越限度額は100%です。
法人税法上の中小法人
法人税法上、資本金が原則1億円以下は中小法人とされ、法人税の軽減税率や欠損金の繰越控除の特例、交際費等の損金不算入の特例など税制上の優遇を受けられます。これらに加え、外形標準課税を回避できるというメリットもありますので、コロナ禍によって財務内容が悪化した大企業が、資本金の額を1億円に減資して「中小法人成り」するというような例が多く報告され、一部に「課税逃れ」との批判も出ていました。
外形標準課税
法人事業税における外形標準課税とは、資本金1億円超の法人に適用され「法人が事業規模に応じて広く薄く負担するもの」(総務省のホームページより)で、事業所の床面積や従業員数などに応じて課税される税金です。
法人実効税率
実効税率とは、法人の実質的な所得税の負担率のことです。法人税、住民税、事業税の法人3税の税率を合計したものですが、税率を単純に合算しただけでは計算できず、損金算入できる税金(法人事業税)の影響を考慮して、下記のような複雑な計算式で計算されます(税率を単純合算したものは表面税率と呼ばれます)。

地方税の税率は自治体ごとの定めがあり、中小法人の法人税の軽減税率もあり、個社ごとの実効税率の計算は素人には難しいです。記事執筆時点で、東京23区を例とした実効税率は、外形標準課税が適用される大法人で30.62%、標準税率が適用される中小法人では33.58%、所得等の条件により超過税率が適用される中小法人で34.59%だそうです。ただし、法人税の軽減税率が適用される会社であれば実際には30%を切ることもあるでしょう。そのため、日本における法人実効税率は約30%程度とざっくりと理解しておけばよろしいかと思います。なお、これは世界的な税率引き下げ競争の結果で、以前より税率は低い水準に抑えられている状況です。
赤字でも発生する税金
俗に“ショバ代”と言われるそうですが、「法人住民税の均等割」という税金があります。所得が黒字でも赤字でも関係なく、資本金の額や従業員数の規模に応じて課される税金です。これも、自治体ごとに基準は異なるとは思いますが、これを節税するために減資をするケースが見られます。法人住民税の均等割りでは、多くの自治体で資本金1000万円以下にすると節税となる場合が多いので、資本金を1000万円に減資をする会社がよく見られます。
■YouTubeでも詳しく解説!
本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっております。下記リンクのとおり、第64回・第65回が本ページの内容に沿った内容となっております。復習としてもご活用いただけますので、是非ご視聴ください。
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第64回:会計と税務の違いを理解する(2023年11月配信)
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第65回:与信管理担当者が知っておきたいその他税務用語(2023年11月配信)
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