【与信管理における定量分析の基本】
 第30回:財務分析 ちょっと応用編(2)

2026年9月14日

 

決算書の見方や財務分析について記載された書籍はたくさんありますが、与信管理目線に特化して、必要な知識を丁寧に解説したものは多くありません。この【与信管理における定量分析の基本】シリーズでは、与信管理の初心者が、決算書の見方やそのために必要な最低限の会計知識を含め理解できるように、詳しく解説いたします。第30回は「財務分析 ちょっと応用編(2)」と題して、前回に引き続き、「基本編」では取り上げなかったいくつかの財務指標の計算方法などを解説します。

トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。

>>第71回:財務分析 ちょっと応用編その2:インタレスト・カバレッジ・レシオ、D/Eレシオ、債務償還年数、有利子負債利子率(2024年3月配信)
>>第72回:財務分析 ちょっと応用編その3:EBITDA有利子負債倍率、CF有利子負債倍率、営業CFマージン、EBITDAマージン(2024年3月配信)
>>第73回:財務分析 ちょっと応用編その4:手元流動性比率、現預金月商比率、有利子負債月商倍率、費用分析(2024年3月配信)

 

<目次>

■安全性分析:ちょっと応用編【有利子負債利子率】
■安全性分析:ちょっと応用編【債務償還年数】
■安全性分析:ちょっと応用編【D/Eレシオ】
■安全性分析:ちょっと応用編【手元流動性比率/現預金月商比率】
■安全性分析:ちょっと応用編【有利子負債月商倍率/借入金対月商比】
■安全性分析:ちょっと応用編【キャッシュフロー有利子負債倍率】
■収益性分析や効率性分析の応用編は?
■収益性分析:ちょっと応用編【営業キャッシュフローマージン】
■収益性分析:ちょっと応用編【EBITDAマージン】

 

■安全性分析:ちょっと応用編【有利子負債利子率】

文字通り、有利子負債に対する金利の割合です。有利子負債は、負債のなかでも長短借入金や社債、コマーシャルペーパーなど利子を伴う負債のことです。

財務分析で有利子負債利子率を計算する場合の式は、以下のとおりです。「財務分析・基本編」の効率性分析等でも触れましたが、フローのデータであるP/Lの数値とストックのデータであるB/Sの値を比較する場合、B/S側の数値は期初と期末の平均値を取るのが正式です(ここでは有利子負債の期初と期末の平均値を取る)。しかし、実務では複数期のデータが揃わないことも多く、期末数値を用いていることがほとんどです。

有利子負債利子率(%) = 金融費用 ÷ 有利子負債
※ 有利子負債 = 短期借入金 + 割引手形残 + 長期借入金 + 社債、等
※ 金融費用 = 支払利息 + 割引料(手形売却損)

なお、中小企業では借入金に、社長などからの役員借入金が含まれている場合もあり、この「有利子負債利子率」や財務分析・基本編の回でご紹介した「有利子負債依存度」などは、バランスシートの計上額を使った単純計算では実態を表さないことがあります。そのことは頭の片隅にいれておきましょう。

 

■安全性分析:ちょっと応用編【債務償還年数】

債務償還年数は、借入等の有利子負債を何年で返済できるかを見る指標です。基本的には有利子負債の合計をキャッシュフローで割って求めます。この際の分母のキャッシュフローの求め方は、簡易的なものでは「税引き後経常利益+減価償却費」としているものが多いようです。また、分子については「有利子負債-運転資金」として計算していたり、様々な計算式があります。債務償還年数が10年を超えると金融機関は新規の融資を躊躇すると言われます。

 

■安全性分析:ちょっと応用編【D/Eレシオ】

Dは「Dept 負債」、Eは「Equity 資本」のことで、D/Eレシオは「負債資本倍率」等と翻訳されています。文字通り「負債」が「自己資本」の何倍あるかを見ることで財務の安全性を測る指標です。そうすると、以前の財務分析・基本編の回でとりあげた「負債比率=負債合計÷自己資本」と同じではないか?と思われる読者もいると思います。実際、D/Eレシオが「負債比率」と同じ内容として扱われている場合もあります。しかし「D/Eレシオ」と言った場合の分子は負債全体ではなく「有利子負債」の合計、または有利子負債から現預金を差し引いた「純有利子負債」となっていることが多いです。一般にD/Eレシオは1倍以下が望ましいとされます。

(※負債比率と同じ場合の)D/Eレシオ(倍) = 負債合計 ÷ 自己資本

(※一般的な)D/Eレシオ(倍) = 有利子負債 ÷ 自己資本
※ 有利子負債 = 短期借入金 + 割引手形残 + 長期借入金 + 社債、等

ネットD/Eレシオ(倍) = 純有利子負債 ÷ 自己資本
※ 純有利子負債 = 有利子負債 - 現預金

 

■安全性分析:ちょっと応用編【手元流動性比率/現預金月商比率】

財務分析・基本編でも少し補足的に紹介しましたが、与信管理ではお馴染みの指標ですので改めて掲載しています。短期支払能力を簡便に見るため、まずこれを計算する人もいます。「手元流動性」は「現預金」に「1年以内に換金可能な有価証券」を足すことで求めますが、単に「現預金」だけを分子に計算することも多く、与信管理の世界では「この会社は月商の○ヵ月分の現預金がある(=現預金月商比率)」というような会話はよくされます。

手元流動性比率(ヵ月) =(現預金 + 有価証券)÷ 月商

 

■安全性分析:ちょっと応用編【有利子負債月商倍率/借入金対月商比】

さきほど「この会社は月商の○ヵ月分の現預金がある」という言い方を紹介しましたが、「この会社は借入金が月商の○ヵ月分ある」という会話も、与信管理担当者の間ではよくされます。これは「借入金対月商比(単位:ヵ月) = 借入合計 ÷ 月商」という式で求めます。また、特に大企業等の分析では、借入金だけではなくその他の有利子負債も多いので、以下のように「有利子負債月商倍率」として計算することが多いです。

有利子負債月商倍率(倍orヵ月) = 有利子負債 ÷ 月商
※ 有利子負債 = 短期借入金 + 割引手形残 + 長期借入金 + 社債、等
※ 月商 = 年売上高 ÷ 12

当然、財務の安全性の観点から「有利子負債月商倍率」は小さいほうが望ましいです。業種や業態によって一概には言えませんが、目安として3倍(月商規模の3カ月分)程度であれば許容範囲である場合が多いと思います。6倍や12倍(年商規模)を超える場合には「借入過大」と捉え危険性を認識すべきでしょう。

ちなみに前項の「現預金月商比率」のほうは、最低限月商の1ヵ月、一般的には1.5~2カ月分はあって欲しいところです。もちろん、業種・業態、企業規模や絶対額などによって一概には言えません。

 

■安全性分析:ちょっと応用編【キャッシュフロー有利子負債倍率】

有利子負債がキャッシュフローの何倍あるかということです。基本的には「有利子負債」を「フリーキャッシュフロー」または「営業キャッシュフロー」で割って求めているものが多いです。しかし、キャッシュフローについては「税引き後経常利益+減価償却費」が使われたり(その場合は前述の「債務償還年数」と同じ)、「EBITDA」が使われたり(これは「EBITDA有利子負債倍率」と同じ)と様々です。

 

■収益性分析や効率性分析の応用編は?

ここまで、財務分析・基本編で紹介していなかった様々な財務指標や用語についてご紹介しました。これらはすべて安全性分析のカテゴリーに分類されるものです。収益性分析については基本編で紹介していなかったものとしては、以下のようにキャッシュフローを用いたものがいくつかある程度です。あとは、効率性分析における「キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)」などがやや応用的なものですが、すでに基本編で紹介していましたのでここでは割愛します。

 

■収益性分析:ちょっと応用編【営業キャッシュフローマージン】

売上高利益率のキャッシュフロー版のようなものです。売上高利益率では、分子にP/Lの損益項目を分母に売上高を用いて計算しますが、キャッシュフローマージンでは分子にキャッシュフロー計算書のキャッシュフロー項目を使います。ただ、「営業キャッシュフロー」は現金収支であるのに対し、「売上高」は発生主義によるものですから、本来は分母も現金主義の「営業収入」とすべきではないかと感じなくもありません。間接法キャッシュフロー計算書では「営業収入」が判明しないためか「売上高」を用いることが通例となっているようです。筆者個人的には違和感のある財務指標ですし、自ら計算することはまずないです。

営業キャッシュフローマージン(%) = 営業キャッシュフロー ÷ 年売上高 × 100

 

■収益性分析:ちょっと応用編【EBITDAマージン】

こちらは、分子を「EBITDA」、分母を「売上高」としてパーセンテージを求めるものです。EBITDAについては、前述のとおりです。やはり、個人的には若干違和感はありますが、これは各国の会計ルールによる利益計算のブレを排除して、収益性を比較するという意味では、理にかなってはいるかもしれません。

 

■YouTubeでも詳しく解説!

本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっております。下記リンクのとおり、第71回~第73回が本ページの内容に沿った内容となっております。復習としてもご活用いただけますので、是非ご視聴ください。

第71回:財務分析 ちょっと応用編その2のサムネイル>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第71回:財務分析 ちょっと応用編その2:インタレスト・カバレッジ・レシオ、D/Eレシオ、債務償還年数、有利子負債利子率(2024年3月配信)

 

第72回:財務分析 ちょっと応用編その3のサムネイル>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第72回:財務分析 ちょっと応用編その3:EBITDA有利子負債倍率、CF有利子負債倍率、営業CFマージン、EBITDAマージン(2024年3月配信)

 

第73回:財務分析 ちょっと応用編その4のサムネイル>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第73回:財務分析 ちょっと応用編その4:手元流動性比率、現預金月商比率、有利子負債月商倍率、費用分析(2024年3月配信)

 

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