【与信管理における定量分析の基本】
 第31回:財務分析ちょっと応用編(3)

2026年10月14日

 

決算書の見方や財務分析について記載された書籍はたくさんありますが、与信管理目線に特化して、必要な知識を丁寧に解説したものは多くありません。この【与信管理における定量分析の基本】シリーズでは、与信管理の初心者が、決算書の見方やそのために必要な最低限の会計知識を含め理解できるように、詳しく解説いたします。第31回は「財務分析 ちょっと応用編(3)」と題して、生産性分析を取り上げています。付加価値労働生産性、労働装備率、資本集約度、労働分配率、設備生産性など、各指標について基本概要を解説します。

トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。

>>第74回:財務分析 ちょっと応用編その5:生産性分析(2024年4月配信)

 

<目次>

■生産性分析とは?
■付加価値額とは?
■生産性分析【労働生産性(付加価値労働生産性)】
■生産性分析【労働装備率/資本集約度】
■生産性分析【労働分配率】
■生産性分析【設備生産性(資本生産性)】
■生産性分析【労働生産性の分解】

 

■生産性分析とは?

生産性分析の基本は「アウトプット÷インプット」です。つまり、つぎ込んだものに対して、どれだけのパフォーマンスがあるか、ある意味では効率性分析の一種とも言えます。つぎ込んだもの(インプット)の代表例は「従業員数」で、代表的な指標としては「労働生産性」が挙げられます。従業員数など決算書以外のデータを用いる必要があることや、信用度を測る指標としては直接的には関係しないため、与信管理の世界ではあまり馴染みがない分野だと思われます。

しかし、生産性に関わる指標や用語については、経済ニュース等でも耳にすることが多いので、最低限どんなものか知っておいても損はないでしょう。なお、与信管理においても「従業員一人当たり売上高(売上高÷従業員数)」とか「従業員一人当たり営業利益(営業利益÷従業員数)」などは計算している人もいるかもしれません。これも「アウトプット÷インプット」となっていて、れっきとした生産性分析です。

 

■付加価値額とは?

生産性分析の分野では、頻繁に「付加価値額」という言葉が出てきます。付加価値とは、企業の経済活動の結果として生み出される新たな価値のことです。企業が製品を製造したり、サービスを提供したり、商品に何等かの価値を付け加えて販売したりすることの結果として、新たに加えられた価値です。逆に言えば、企業はこの付加価値を生み出して収益を得るために活動しているとも言えます。つまり、自社で新たに生み出した価値が付加価値です。覚えなくてよいと思いますが、付加価値額の計算式の代表的なものは以下があります。

 中小企業庁方式(控除法)による付加価値額 = 売上高 - 外部購入価値
※ 外部購入価値 = 材料費、部品費、商品購入、運送費、外注加工費などの他社が生み出した価値

 日銀方式(加算法)による付加価値額 = 経常利益 + 人件費 + 賃借料 + 純金利費用 + 減価償却費 +租税公課

 

■生産性分析【労働生産性(付加価値労働生産性)】

労働生産性は「従業員一人当たり付加価値額」のことです。そして、労働生産性は、「付加価値率」と「従業員一人当たり売上高」に分解可能です。「付加価値率」とは、売上高に占める付加価値額の割合です。

 労働生産性 = 付加価値額 ÷ 従業員数

 労働生産性の分解① =(付加価値額 ÷ 売上高)×(売上高 ÷ 従業員数)
=付加価値率 × 従業員一人当たり売上高

 

■生産性分析【労働装備率/資本集約度】

労働装備率はB/Sの「有形固定資産」を「従業員数」で割って求めます。つまり「従業員一人当たり設備投資額」で、機械化や自動化の進展状況を見ます。資本集約度は「従業員一人当たり総資本額」です。どちらも、大型の設備投資が行われる製造業などでは高くなり、労働集約型のサービス業などでは低くなる傾向があります。

 労働装備率 = 有形固定資産 ÷ 従業員数

 資本集約度 = 総資産 ÷ 従業員数

 

■生産性分析【労働分配率】

労働分配率は「付加価値額」に対する「人件費」の割合です。人件費の適性水準を見るものです。

 労働分配率(%) = 人件費 ÷ 付加価値額 × 100

 

■生産性分析【設備生産性(資本生産性)】

設備生産性は「付加価値額」を「有形固定資産」で割って求めます。これは設備投資の効率性を見ています。

 設備生産性 = 付加価値額 ÷ 有形固定資産

 設備生産性の分解 = (売上高 ÷ 有形固定資産) × (付加価値額 ÷ 売上高)
=   有形固定資産回転率  ×  付加価値率

 

■生産性分析【労働生産性の分解】

労働生産性は上記項目で説明した「売上高」を切り口とした分解以外にも、「設備」や「人件費」などを切り口に分解できます。このことによって、その企業の生産性はどこに課題があるのかを分析します。

 労働生産性の分解② = (有形固定資産 ÷ 従業員数) × (付加価値額 ÷ 有形固定資産)
=   労働装備率  ×  設備生産性

 労働生産性の分解③ = (人件費 ÷ 従業員数) × (付加価値 ÷ 人件費)
= (人件費 ÷ 従業員数) ÷ (人件費 ÷ 付加価値)
=   従業員一人当たり人件費  ÷  労働分配率

 労働生産性の分解④ = (総資本 ÷ 従業員数)×(総資本 ÷ 売上高)×(付加価値 ÷ 売上高)
=   資本集約度  ×  総資本回転率  ×  付加価値率

 

■YouTubeでも詳しく解説!

本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっております。下記リンクのとおり、第74回が本ページの内容に沿った内容となっております。復習としてもご活用いただけますので、是非ご視聴ください。

第74回:財務分析 ちょっと応用編その5:生産性分析サムネイル>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第74回:財務分析 ちょっと応用編その5:生産性分析(2024年4月配信)

 

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