【知っておきたい 信用調査・与信管理のよろず知識】
 第5回:倒産1万件時代の与信環境を考える

2026年7月13日

 

この連載シリーズコラム【知っておきたい 信用調査・与信管理のよろず知識】では、主に定性分析に役立つ知識を中心に信用調査や与信管理に関する様々な知識やノウハウをご紹介しています。なお、定量分析(財務分析)については、別の連載シリーズ【与信管理における定量分析の基本】で解説しています。

また、本連載シリーズは、トーショーの公式YouTubeにて配信している【シリーズ動画『信用調査・与信管理 よろず話』】ともリンクした内容となっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。

>>#07:倒産1万件時代の与信環境を考える(2026年1月配信)

 

<目次>

■厳しさを増す与信環境 ~企業倒産の増加~
■倒産増加の要因

 

近年、企業の倒産が増加傾向で推移しています。今回のコラムでは、事業会社の与信管理をとりまく外部環境についての現状や倒産増加の要因、今後の見通しなどについて解説します。

 

■厳しさを増す与信環境 ~企業倒産の増加~

日本の企業倒産の発生件数に関する統計は、大手二大信用調査機関(㈱帝国データバンクと㈱東京商工リサーチ)によるものが公表され、政府の資料や報道等でも知ることができます。報じられているところによれば、昨年2025年の1年間の倒産統計は、両社ともに前年から少し増えて「1万件超」の発生水準となっていました。

その前年2024年も実はほぼ「1万件」に達していたのですが、その際は前年2023年に比べて15%以上も増えての1万件到達でした。今年2026年に入ってからも現時点では、2025年を上回るペースで倒産が発生しており、倒産「1万件規模」が常態化しつつあるというのが現状です。

この「年間1万件規模の倒産」が多いか少ないかということですが、かつて倒産件数が2万件に迫るという時代もありました。それは、90年代のバブル経済崩壊から2000年代の初頭にかけての大倒産時代で、負債額も非常に大きな上場会社の倒産なども多数発生していました。

では、2万件時代があったのなら現在の1万件という水準が少ないのかと言えば、決して少ないとは言えません。しかも急激な増加傾向にあるという点に注意が必要です。

コロナ禍の時期は経済が停滞し厳しい経営環境であったのはご存じの通りですが、その頃に企業の倒産が増えたかと言えば、実際には倒産は非常に少なかったのです。これは「ゼロゼロ融資」(実質無利子・無担保の新型コロナウイルス感染症緊急特別融資)をはじめとした様々な政府による手厚い資金繰り支援政策の効果によるものです。コロナ禍の真っただ中、2021年の倒産統計は約6000件に抑制されていました。

6000件という低水準だった倒産件数がコロナ後の支援政策終了による反動もあり、短期間に1万件規模にまで増えてそれが常態化しつつあるということですので、与信リスク管理の重要性は昨今ますます高まってきているということが言えるでしょう。

 

■倒産増加の要因

企業倒産が増えている要因については、下図にいくつかのキーワードを表示しています。まず「世界の政治・経済情勢の混沌」とあるように、ウクライナや中東での紛争発生、米中貿易摩擦などを契機とした供給制約から世界的に「インフレ」が進行しています。加えて日本においては円安が進行し輸入物価が上昇、インフレ傾向が顕著です。

「厳しい経営環境下、与信管理はますます重要に!」イメージ図

景気が良くてインフレが進行したというよりも、世界的な物価上昇や円安によるコストプッシュで物価高が進んでいる傾向もみられ、原材料や資材といった仕入コストの高騰が中小企業の経営を圧迫しています。加えて大企業に比べると価格転嫁が難しい企業が多いのも実情です。

中小企業にとって仕入コスト増大よりも更に深刻なのは「人手不足」の問題です。大企業が賃上げを進めるなかで、大部分の中小企業に同等の賃上げ余力はありません。政府の統計等によれば中小企業の労働分配率(企業が生み出す付加価値に占める人件費の割合)は、すでに7~8割程度の水準に達しており(※2025年度版中小企業白書(概要資料)「労働分配率の推移(企業規模別)」)、賃上げ余力はほとんどないというのが実情です。

昨今賃上げの必要性が叫ばれ、大企業を中心に初任給の大幅増額などが行われていますが、今後賃金格差がさらに拡大することが予想されます。中小零細企業においては更なる人材流出を招き、人材難に拍車がかかる懸念があります。

そして、このインフレ・人手不足という状況にさらに加わってきているのが、「金利の上昇」です。30年ぶりの「金利のある世界」の到来と言われていますが、日銀の金融政策の転換により長年続いた低金利時代は終焉を迎えつつあります。コロナ禍を経て、過剰な債務を抱えている企業が増えているなかで、金利の上昇圧力は確実に企業の収益を圧迫することになっていくと考えられます。

インフレ・人手不足・金利上昇の三重苦に襲われ、中小企業の経営環境はかつてないほど厳しく、倒産増加の要因は将来に向けてますます増えていると言えるでしょう。

また、個別の企業倒産事例の傾向として、粉飾決算が発覚しての比較的規模の大きな非上場企業の倒産が目立っています。しかも、その粉飾というのは20年以上の長きにわたって行われ隠されていたものが、最近になって発覚したというケースが多いのです。粉飾決算の発覚が相次ぐ理由については、下記リンクからアクセスできる動画で詳しく解説していますので、ぜひご覧いただければと思います。

 

■YouTubeでも詳しく解説!

本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【シリーズ動画『信用調査・与信管理 よろず話』】ともリンクした内容になっています。動画ではより詳しい解説をしていますので、以下のリンクから動画を是非ご視聴ください。

「#07:倒産1万件時代の与信環境を考える」サムネイル>>#07:倒産1万件時代の与信環境を考える(2026年1月配信)

 

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