【知っておきたい 信用調査・与信管理のよろず知識】
 第2回:焦付き、貸し倒れとは? 恐ろしい焦付きのリスク

2026年4月16日

 

この連載シリーズコラム【知っておきたい 信用調査・与信管理のよろず知識】では、主に定性分析に役立つ知識を中心に信用調査や与信管理に関する様々な知識やノウハウをご紹介しています。なお、定量分析(財務分析)については、別の連載シリーズ【与信管理における定量分析の基本】で解説しています。

また、本連載シリーズは、トーショーの公式YouTubeにて配信している【シリーズ動画『信用調査・与信管理 よろず話』】ともリンクした内容となっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。

>>#04:焦付き、貸し倒れとは? 恐ろしい焦付きのリスク(2025年10月配信)

 

<目次>

■焦付き(=貸倒れ)とは?
■焦付きの怖さ① 業績への悪影響
■焦付きの怖さ② 資金繰りへの悪影響
■焦付きの怖さ③ 対外信用力や社員士気の低下

 

■焦付き(=貸倒れ)とは?

今回は、前回ご説明した「与信リスク」が実際に顕在化した場合、つまり焦付き(貸し倒れ損失)が発生した場合に、企業の経営に与える様々な負の影響について解説をします。

まず、「焦付き」という言葉の意味ですが、国語辞書によれば「貸した金銭が回収不能になること」(※引用『デジタル大辞泉』)などと説明されています。しかし、お金を貸すという行為だけでなく、一般のビジネスで商品を先に渡したり、サービスを先に提供したりして、後から代金回収する場合においても、取引先が倒産するなどして代金が回収不能となった状態を「焦付き」と言います。

従って、「焦付き」を回避するための信用調査や与信管理の必要性は、銀行などの金融機関に限った話ではなく、私たち事業会社においても必須の取り組みということになります。なお、一般的にBtoB取引を行う事業会社における焦付きの発生は、売買代金債権についてのものが多く、その他にも請負代金債権や役務提供債権などがあります。

ちなみに、焦付きは「貸し倒れ」とも言います。会計用語でも「貸倒損失」という言葉があります。また、「不良債権」と言う言葉も聞くことがあるかもしれません。これも、焦付きとほぼ同じような意味で使われていますが、不良債権は、焦付いた債権そのものを指しています。または焦げ付く恐れがある債権を含めて言うこともあるようです。

 

■焦付きの怖さ① 業績への悪影響

なぜ、審査業務や与信管理が重要なのかという点をより端的に言えば、焦付きは企業の「業績」や「資金繰り」に重大な影響を及ぼすからです。

まず、企業の業績に対して焦付きがどのような影響を及ぼすかを考えたいと思います。

『中小企業実態基本調査』という統計データの令和6年版の速報値

上の図は、『中小企業実態基本調査』という統計データの令和6年版の速報値から、売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高純利益率の4つについて、個人企業を除く法人企業の合計値を用いて計算してみたものです。

なお、この「売上高利益率」の財務指標について、詳しくは別のページ「【与信管理における定量分析の基本】第11回:財務分析 基本編(その3)」で解説しています。

ここでは、簡潔に説明しますが、売上高総利益率の売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いて残った利益(「粗利益」とも言います)のことです。その企業が提供している商品・製品・サービス等の付加価値が高く、高価格で販売できていれば売上総利益が大きくなります。そして、売上高総利益率というのは、本業で得た収益である売上高に占める売上総利益の割合を示したものです。

営業利益は、粗利益から、さらに販売費および一般管理費とよばれる企業の販売活動や管理活動にかかわる経費を差し引いて残った利益のことで、これが「本業の儲け」を表す利益です。焦付きが発生した場合の貸倒損失やそれに備える貸倒引当金の繰り入れも、基本的には販売費および一般管理費になりますので、営業利益は焦付きとは密接な関係にあります。

経常利益は、営業利益に、本業以外で生じた収益と費用(例:家賃収入、支払利息)を差し引きして残った利益です。本業の儲けと本業以外の活動を合わせた利益ですので、企業の総合的な収益力を表します。営業利益とならんで、与信管理では重要視する人が多い利益です。
純利益(当期純利益)は、その決算期における一過性の収益や損失を加味して、さらに法人税等の税金も支払ったうえで最終的に残った利益のことです。

さて、上表で特に注目したいのは、大量の商品売買に携わる商社など卸売業の営業利益率は約2%程度にすぎないということです。この利益率2%程度の商取引において、焦付きが発生した場合、企業の業績に与えるマイナスの影響はどのようなものでしょうか。

単純化して、売上高100万円で利益率2%の商品売買の取引で、この100万円の売上が回収できなくなった場合、それを取り返すにはいくらの売上をあげなければならないかを考えてみましょう。その回答は、「また頑張って100万円売ってくればよい」ということではなく、すでにこの取引について仕入や諸経費が発生している為、それはまるごと100万円の利益を吹き飛ばすことになってしまうということです。

従って、売上100万円の焦付きの穴埋めには100万円の売上ではなく、100万円の“利益”を作り出して穴埋めをしなければならないということです。つまり、同じ2%のビジネスで100万円の利益をつくりだすには、100万円の50倍、5000万円もの売上を創出しなければならなくなります。

100万円の利益をつくりだすには…イメージ図

つまり、焦付きの発生は、企業の業績に与えるマイナスのインパクトが極めて大きいということです。卸売業において、与信管理の重要性が高いと言われるのはこのためです。

 

■焦付きの怖さ② 資金繰りへの悪影響

さらに、回収できるはずのお金が入ってこないことは、自社の資金繰りに重大な影響を及ぼします。業績へのマイナスのインパクトもさることながら、実は焦付きで一番怖いのは、本来入るはずであったお金が予定どおりに入って来ないことです。

企業は経営成績が短期的には赤字だとしても、「お金が回っていれば」倒産はしませんが、予想外に大きな焦付きが発生する可能性もあります。それにより、本来は仕入先や借入先への支払い、従業員の給与などに回るべき資金を手当てできない事態に陥れば、お金を約束どおりに支払うことができなくなり、場合によっては自社も連鎖的に倒産してしまいます。このことを「連鎖倒産」と言いますが、まさに焦付き発生による最悪の事態と言え、資金繰りへの影響が焦付き発生によるリスクの中で最大のリスクと言えるでしょう

 

■焦付きの怖さ③ 対外信用力や社員士気の低下

さらに、業績、資金繰りへの影響だけでなく、焦付きによって対外信用力が低下し金融機関からスムーズに資金調達ができなくなったり、本来であれば生産性のある前向きな営業活動に振り向けられる時間や人材などの貴重な経営資源を、債権回収や事後処理に振り向けなければならなくなったりします。

社員の士気にも影響し、正常な企業経営活動の遂行において様々な悪影響を及ぼすということです。

このように焦付きは企業にとって大きなリスクであるため、与信取引を実施する会社においては、与信リスクに備えた管理体制の構築や取引先の信用調査などが必要不可欠であるということになります。

 

■YouTubeでも詳しく解説!

本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【シリーズ動画『信用調査・与信管理 よろず話』】ともリンクした内容になっています。動画ではより詳しい解説をしていますので、以下のリンクから動画を是非ご視聴ください。

 

#04:焦付き、貸し倒れとは? 恐ろしい焦付きのリスク(2025年10月配信)サムネイル>>#04:焦付き、貸し倒れとは? 恐ろしい焦付きのリスク(2025年10月配信)

 

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