2026年8月13日
決算書の見方や財務分析について記載された書籍はたくさんありますが、与信管理目線に特化して、必要な知識を丁寧に解説したものは多くありません。この【与信管理における定量分析の基本】シリーズでは、与信管理の初心者が、決算書の見方やそのために必要な最低限の会計知識を含め理解できるように、詳しく解説いたします。第29回は「財務分析 ちょっと応用編(1)」と題して、財務分析の「基本編」の簡単な復習と、「基本編」では取り上げなかったいくつかの財務指標の計算方法などを解説します。
トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。
>>第70回:財務分析 ちょっと応用編その1:基本のおさらいダイジェスト(2024年2月配信)
>>第71回:財務分析 ちょっと応用編その2:インタレスト・カバレッジ・レシオ、D/Eレシオ、債務償還年数、有利子負債利子率(2024年3月配信)
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<目次> ■財務分析の切り口:全体像(復習) |
■財務分析の切り口:全体像(復習)
下記は、以前「財務分析 基本編」で最初にご紹介した一覧表です。
| 切り口 | 説明 | 主な財務指標 |
| 安全性分析 | 資本構成に占める負債や自己資本の割合の健全性を見たり、運用形態と調達方法のバランスから流動性(短期の支払能力)に関する分析を行ったりする | 自己資本比率、負債比率、D/Eレシオ、有利子負債依存度、流動比率、当座比率、固定比率、固定長期適合率、手元流動性比率、インタレスト・カバレッジ・レシオ、有利子負債月商倍率、有利子負債キャッシュフロー倍率、等 |
| 効率性分析 | 投下した資本が、どれだけ効率よく売上に貢献しているかなどを分析する。回転率(回転数)や回転期間により優劣を判断する | 総資本回転率、経営資本回転率、現預金回転率、売上債権回転率(期間)、棚卸資産回転率(期間)、固定資産回転率、有形固定資産回転率、仕入債務回転率(期間)、等 |
| 収益性分析 | 売上高に対する利益の割合(売上高利益率)や、投下資本に対する利益の割合(資本利益率)などにより収益性を分析する。なお、資本利益率は効率性分析の側面もあり、総合分析指標と言える | 売上高総利益率、売上高営業利益率、売上高経常利益率、売上高当期純利益率、営業キャッシュフロー・マージン、EBITDAマージン、ROA(総資本経常or営業利益率)、ROE(自己資本利益率)、等 |
| 生産性分析 | 人員リソースなどの投入に対する、産出量や売上などアウトプットの関係を分析する。基本式は「アウトプット÷インプット」で算出 | 労働生産性(従業員1人当たりの付加価値)、労働分配率(付加価値÷人件費)、労働装備率、資本集約度、等 |
| 成長性分析 | 一定期間における各種経営数値の成長度合いを分析する。一般的には1年単位で成長性を図り、その推移を分析する | 売上高成長率、総資本成長率、営業利益成長率、経常利益成長率、等 |
このうち、安全性分析、効率性分析、収益性分析について、特に赤い文字で記載している財務指標については、「財務分析 基本編」(第9回~11回)にて与信調査における財務分析の基本中の基本ということで、詳しく解説しました(※一部、赤文字以外の指標もすでに解説しています)。また、成長性分析についても、「基本編」にて、基本となる計算式【(当期数値 - 前期数値 )÷ 前期数値 × 100 】をご紹介していました。
「財務分析 ちょっと応用編」では、「基本編」で取り上げなかったいくつかの財務指標の計算方法などを解説していきます。また、上表に記載されている財務指標分析だけでなく、損益分岐点分析や経常収支の分析などについても、今後の回で基本知識をご紹介する予定です。
■安全性分析:ちょっと応用編【インタレスト・カバレッジ・レシオ】
インタレスト(interest)は英語で「金利」、レシオ(ratio)は「比」とか「割合」の意味で、直訳すれば「金利のカバー率」ということになります。インタレスト・カバレッジ・レシオは、事業上の儲けで金利などの金融費用がどれだけまかなえているか、「金融費用の何倍の利益を稼いでいるか」を計算するものです。
インタレスト・カバレッジ・レシオをご自身で計算してみるというケースは多くないかもしれませんが、新聞記事や統計資料、調査会社の信用調査レポートなどで目にすることは多いと思います。その際に、分子の部分が会計上の「利益」となっている場合と、「キャッシュフロー」ベースとなっている場合があります。
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) = 事業利益 ÷ 金融費用
※ 事業利益 = 営業利益 + 受取利息 + 受取配当金
※ 金融費用 = 支払利息 + 割引料(手形売却損)
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) = 営業キャッシュフロー ÷ 金融費用
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) = フリーキャッシュフロー ÷ 金融費用
※ フリーキャッシュフロー = 営業キャッシュフロー + 投資キャッシュフロー
インタレスト・カバレッジ・レシオは、債務の償還能力を見る安全性分析の一種です。当然、金利等の金融費用より稼ぎのほうが大きい必要がありますので、この倍率は高ければ高いほどよく、1倍を切っているということは、儲けよりも金利が大きくなっているということですので、危険水準であると判断されます。
バランスシートで計算する流動比率や当座比率が、元本の償還能力に着目しているのに対して、P/Lなどのフローのデータで計算するインタレスト・カバレッジ・レシオは利息の償還能力に着目していると言えます。
■安全性分析:ちょっと応用編【EBITDA有利子負債倍率】
EBITDAは、英語の「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization」の頭文字です。直訳すると「利払い前・税引前・償却前利益」となります。新聞記事などでよく見かける用語ですが、読み方は「イービットディーエー」とか「イービットダー」とか人によりまちまちです。この利益が重視されるのは、各国の会計ルールの影響を排除して、企業ごとの稼ぐ力(収益性)を比較しやすいということがあります。また、償却前利益ということで、簡易的なキャッシュフローに近い概念でもあります。
EBITDAの計算式は必ずしも決まっていませんが、直訳どおりの厳密な定義に従えば「当期純利益」に「法人税、住民税及び事業税」「支払利息」「減価償却費」を足し戻して求めます(※引当金繰入額を考慮する場合もあります)。しかし、簡易的には「営業利益」に「減価償却費」を足して求めているケースが多いです。この場合は「償却前営業利益」と同じになります(※厳密な定義に基づくものに比べると、営業外損益の一部や特別損益が含まれない)。
EBITDA = 当期純利益 + 法人税等 + 支払利息 + 減価償却費
簡易型EBITDA = 営業利益 + 減価償却費
そして、EBITDA有利子負債倍率ですが、文字通り、有利子負債がEBITDAの何倍あるかを求めるものです。分子については「有利子負債合計-現預金」として「純有利子負債」としていることもあります。
EBITDA有利子負債倍率(倍) = 有利子負債合計 ÷ EBITDA
EBITDAやEBITDA有利子負債倍率も、与信管理の実務者が自身で計算して求めるケースは多くないと思いますが、ニュース媒体等ではよく見かけると思います。その際には、上記のとおり、EBITDAの計算式が、それぞれの掲載資料により異なっている場合があるということは知っておくとよいと思います。
※安全性分析:ちょっと応用編の続きは次回(第30回)に掲載します。
■YouTubeでも詳しく解説!
本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっております。下記リンクのとおり、第70回・第71回が本ページの内容に沿った内容となっております。復習としてもご活用いただけますので、是非ご視聴ください。
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第70回:財務分析 ちょっと応用編その1:基本のおさらいダイジェスト(2024年2月配信)
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第71回:財務分析 ちょっと応用編その2:インタレスト・カバレッジ・レシオ、D/Eレシオ、債務償還年数、有利子負債利子率(2024年3月配信)
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