2025年4月18日
決算書の見方や財務分析について記載された書籍はたくさんありますが、与信管理目線に特化して、必要な知識を丁寧に解説したものは多くありません。この【与信管理における定量分析の基本】シリーズでは、与信管理の初心者が、決算書の見方やそのために必要な最低限の会計知識を含め理解できるように、詳しく解説いたします。第13回は「与信管理担当者のための簿記知識(その2)」と題して、簿記の仕訳について具体例を提示しながら解説します。
トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。
>>第38回:簿記知識編その3:期中仕訳①(商品売買、掛け取引、手形)
>>第39回:簿記知識編その4:期中仕訳②(前払/前受、未収/未払、有価証券)
<目次> ■期中取引の仕訳例:商品売買 |
■期中取引の仕訳例:商品売買
商品売買取引の仕訳方法は三分法、分記法、売上原価対立法など複数ありますが、多くの会社で三分法が採用されているようです。三分法は、簿記3級のテキストでも、おそらく最初に取り上げられる基本中の基本の仕訳ですが、筆者個人的には少し特殊な仕訳方法という感じもしています。
というのは、「商品500万円分を現金で仕入れた」という取引を、素直な発想で仕訳すると「商品という資産の増加 / 現金という資産の減少」というふうに思うのが自然だと思うのですが、三分法では、「仕入という費用の増加 / 現金という資産の減少」というように処理するからです。
そして、「商品を600万円で掛け売りした」という取引は、「売掛金という資産の増加 / 売上という収益の増加」として記録します。「売上」という収益勘定が使われます。
上記のように三分法では、期中の仕訳で「仕入」という費用勘定と、「売上」という収益勘定を使います。では、最終的に貸借対照表に載ってくる「商品」という資産勘定はどうやって計上されるのかというと、三分法では、決算時にまとめて決算整理仕訳の処理によって計算します。それについては、今後の回で説明します。
■期中取引の仕訳例:掛け取引
前項目の「売掛金600万円が得意先から普通預金へ振り込まれた」場合の仕訳は、以下のとおりです。
「半金半手」などと言いますが、「売掛金の半分を約束手形で、残りを小切手で回収した」というような取引は、下のような仕訳になります。左側の勘定が2つになりましたが、左右の合計金額はやはり一致します。
「買掛金500万円を小切手を振り出して支払った」という場合は、現金の減少ではなく当座預金の減少です。小切手は現金同等物ですので、得意先が振り出した小切手を受け取った場合は「現金」で処理しますが、自社が振り出す場合の小切手は、後日銀行に持ち込まれた際に当座預金から引き落とされるためです。
「買掛金500万円の支払として約束手形を振り出した」という場合は、以下のとおりです。
■期中取引の仕訳例:手形、電子記録債権
単に「手形」と言った場合には、約束手形を指すのが一般的です。約束手形は「手形に書いてある支払期日までに、書いてある金額を支払うことを約束する証券」です。裏書きして譲渡することで、他への支払いにも利用できます。電子記録債権も同様の機能を持っていますが、分割譲渡が可能であるなどの違いがあります。前項目で、手形の受取りと振出しに関する仕訳は紹介しましたので、それ以外の仕訳例を以下に示します。
「得意先から受け取った約束手形400万円の支払期日が到来し、当座預金に入金された」「振り出した約束手形300万円の支払期日が到来し、当座預金から決済された」という2つの仕訳は以下のとおりです。
電子記録債権の場合は、受取手形に相当するのが「電子記録債権」、支払手形に相当するのがが「電子記録債務」となります。その他の仕訳としては、裏書譲渡(回し手形)は、「受取手形の減少」で処理します。
手形の割引は、手形期日までの利息相当分(割引料)を差し引いて換金することです。手形の割引は借入のようですが、現在では手形の売却と解釈されており、勘定科目は「手形売却損」を使用します。「販売先から受け取った手形200万円を銀行で割引き、割引料4万円が差し引かれた手取り196万円を当座預金に預け入れた」
■期中取引の仕訳例:前払金、前受金
「前払金」(=「前渡金」)は、手付金や内金のように、仕入れやサービス購入代金の一部や全部を事前に支払った場合に使われる勘定科目です。
「商品300万円を発注し、内金(手付金)として50万円を現金で支払った」⇒ 後日「商品300万円分を受け取り、代金のうち50万円は内金で充当し、残額は掛けとした」
「前受金」は、逆に手付金や内金を、事前に受け取った場合に使われる勘定科目です。
「商品300万円の注文を受け、内金(手付金)として50万円を現金で受け取った」⇒ 後日「商品300万円を納品し、代金のうち50万円は注文時の内金と相殺し、残額は掛けとした」
■期中取引の仕訳例:未収入金、未払金
「売掛金」も「未収入金」も、どちらも後日に代金を受け取る権利を示す資産の勘定科目ですが、「売掛金」は本業(主たる営業活動)の売上となる商品・製品・サービス等に用いるのに対し、「未収入金」は、有形固定資産の売却など本業以外の取引で用いる勘定科目です。
同様に「買掛金」と「未払金」の関係も、本業の仕入に関するものか、それ以外かで使い分けられます。
「簿価15万円の備品を10万円で売却し、後日支払いを受け取ることとした」⇒ 後日「備品の売却代金が、普通預金に振り込まれた」
「営業に利用する自動車を100万円で購入し、代金は後日支払うこととした」⇒ 後日「自動車の購入代金を現金で支払った」
■期中取引の仕訳例:有価証券
有価証券の種類(4分類)については、連載コラム第2回の貸借対照表の回で説明していますので、そちらをご覧ください。ここでは、仕訳のイメージをつかむために、簡単な仕訳例をいくつかご紹介します。
「短期売買目的で株式10株を1株20万円で購入し、購入手数料1万円とともに小切手で支払った」。下の仕訳を見てのとおり、取得原価には付随費用が含まれていることになります。
「短期売買目的で保有する取得原価合計201万円の株式10株を1株25万円で売却し、現金を受け取った」
「短期保有目的で保有する取得原価合計201万円の株式10株を1株15万円で売却し、現金を受け取った」
■YouTubeでも詳しく解説!
本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっております。下記リンクのとおり、第38回・第39回が本ページの内容に沿った内容となっております。復習としてもご活用いただけますので、是非ご視聴ください。
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】 第38回:簿記知識編その3:期中仕訳①(商品売買、掛け取引、手形)
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】 第39回:簿記知識編その4:期中仕訳②(前払/前受、未収/未払、有価証券)
■トーショーは企業の“変化”を捉える定性情報をご提供
トーショーでは、与信管理に欠かせない「定性情報」を収集・提供しています。抜群の情報収集力と長年にわたって蓄積されたデータベースから、お客様の与信管理ニーズに応じた配信形式でご提案いたします。
> 企業信用情報のサービス紹介はこちら
> 資料ダウンロード・資料請求はこちら
■財務分析から定性的な情報まで、トーショーの企業信用調査で情報収集を
企業信用調査もトーショーにお任せください。お客様の指定事項をカバーするオーダーメイド調査により、数多くのお客様から高い評価をいただいています。