企業情報における「資本金」の意義TOPICS

2022年12月20日

大企業の減資が流行

政府の公表資料によれば、資本金1億円超の外形標準課税対象法人数が、2020年度は1万9,989社と、ピーク時から約1万社も減少し、割合も3分の2に縮小しました。

2015年にシャープが「資本金を1億円に減資する」と発表し、話題になったことが記憶に新しいですが、その後もコロナ禍の経済環境下で、このような節税を目的とした大企業の“中小法人成り”が増え続けています。上場企業でも「資本政策の柔軟性・機動性の確保と税負担の軽減を図るため」などという理由で、減資を躊躇しないのが今のトレンドです。

資本金は、登記情報や会社ホームページなどで確認でき、比較的入手しやすい情報です。以下、企業信用調査の観点から資本金をどうとらえるべきか考察したいと思います。

 

取引先の資本金の額をどう見るか

まず資本金から何が読み取れるかですが、従来資本金は売上高などの経営成績と並んで、企業規模をはかる目安とされることが多く、資本金額の大きさは、長く会社のステータスを表すものという風潮がありました。もちろん今でも、資本金300万円の会社より資本金30億円の会社のほうが企業規模が大きいという第一印象は誰もが持つと思います。

しかし、純資産のなかで資本金はあくまでも事業開始時または追加の増資などで出資者から払い込みを受けた額にすぎませんから、事業を営むなかで資本金が小さくても儲かっていて純資産全体の額が大きくなっている会社もあります。逆に資本金の額が大きくても、ベンチャー企業などで累積損失を膨らませて、純資産を目減りさせ続けている会社もあり、資本金の額のみで取引先の信用度合いを判断するのは無理があります。

期待のスタートアップ企業では、VCファンドなどから数十億円規模の巨額の資金を集めているケースもありますが、シード期にある企業では、まだ稼ぐ力が備わっていない場合もあり、「資本金が大きいから」と手放しで与信ができるというわけではありません。

とくに、資本金の額よりも売上高の規模がはるかに小さいような会社の場合には、特に注意が必要でしょう。不祥事で2022年8月に倒産したバイオベンチャーのテラ㈱(東京都)は資本金約33億円に対し2021年度の連結売上高はわずかに1億円強という水準でした。

 

取引先において減資がなされた場合は?

続いて、取引先において減資があった場合のチェックポイントについて、これは一つの「気づき」として、その背景については、直接取引先にヒアリング等で確認する必要があります。

減資が行われる背景としては、冒頭に触れたとおり節税を目的とする場合もありますし、同じ純資産の部の繰越利益剰余金のマイナス(累積損失)を穴埋めするために資本金の額を減少させた分と相殺することなどがよく行われています。同時に、スポンサーによる新たな増資が行われる場合もあり、会社再建の現状が判明する場合もあります。

さて、政府は冒頭で触れた大企業の“中小法人成り”を課税逃れとみて、法人事業税の外形標準課税について、資本金以外の課税基準の設定を検討してきました。早期の改正は見送りとなったようですが、引き続き議論されていく模様です。

資本金額が企業のステータスを示さなくなった今、私たちも与信管理において、取引先の資本金を単純な額だけでなく、その内容まで踏み込んで一度検証していく必要があるかもしれません。

(有香亜美)

 

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