事業承継、それぞれの姿TOPICS

2023年8月4日

同族経営のメリット・デメリット

企業の後継者不足が深刻化している。子息に承継させるか、プロパー社員を登用するか、外部から引っ張ってくるか中小企業だけの問題ではなく、ユニクロ、日本電産のような大企業でも問題になっている。同族経営は古いと言われる時代があったが、トヨタ、サントリー、ジャパネットたかた、など、同族経営が成功していると言われる企業例は数多くある。

どちらがいいと言えず、それぞれ良し悪しはあるが、同族経営のメリットとしては、‘責任感が強い’ということがあげられるか。子供のころから父親が命懸けで守ってきた会社や従業員は、実の子であればなんとしても守っていかねばならない、という使命に燃えるはず。

逆にデメリットとしては、後継者候補となる子息が経営者として能力不足ということもあるが、家族間の人間関係が弊害になることもある。また、会計処理において、個人的な支出が経費として処理されるなど会計処理が不透明になるせいか、決算書の開示性が低く、調査に対しても非協力的な印象を受ける。これは外部に対してだけではなく、従業員に対しても同様で、上層部だけで意思決定をしてしまい、従業員は指示されたことを実行するだけでは、士気も下がってしまう。

 

事業承継の姿も様々

筆者が企業信用調査の取材現場で見てきた事業承継の姿も各社各様だ。後継者の能力不足が問題になるケースがあると述べたが、逆に後継者が逆境をはねのけ会社を成長軌道に乗せる場合もある。

最近で印象深い事例は、男気のある2代目によって再建した素材加工業者のケース。高い技術力を背景として得意先を確立し、手堅い経営を続けてきた当社であったが、2000年代初頭に得意先の倒産により大口の不良債権が発生。当社の経営も行きづまった。先代社長は引責辞任することになったが、他の役員は厳しい状況から後任を辞退。他に引き受け手もなく、先代の子である現社長が若くして2代目社長に就任した。

その後は親族の協力に加え、懸命の努力により取引先からの信頼も取戻し、次第に業況も回復しつつあった。しかし、再び危機が訪れる。東日本大震災で工場が被災して窮地に陥ったのだ。ただ、ここにおいても一人も解雇せずに乗り切ったおかげで、今では従業員が率先して社長を助けてくれるようになった。

最近では、3代目社長になる予定の息子が入社。現社長は数字に疎く苦労することもあったので、息子には大学で金融工学を学ばせて金融機関に就職させた。コロナ禍の影響で一時的に業績が落ち込んだものの、これまでに得た信頼関係によって得意先からの優先的な受注を受けており、業績は早くも回復を見せている。

 

後継者の育成は一筋縄ではいかない

一方、目の上のたんこぶが経営の妨げとなっているのではないか。そんなふうに感じざるをえなかった事例もある。業種など詳細は伏せるが、登記上の代表者となっている2代目社長の名刺が「専務」となっていたケース。先代に気を使ってか、ホームページにも代表交代の記載はない。先代社長の存在感が、後継者の経営の足かせとなる場合もあるのだ。

少し変わった例としては、社長の突然の引退宣言から、事業承継が「社内公募」で行われたケースもあった。このケースでは、社歴の浅い社員がやる気を買われて新社長に抜擢されたが、事業環境の厳しさもあり前途多難な船出となっているようだ。

社長の右腕となるような番頭格の社員がいない、次を担う能力のある後継者が育っていない。そんな会社は多い。中小企業白書にも、後継者の育成には5年から10年かかるとある。スムーズな事業承継のためには、後継者の育成に早すぎるということはないようだ。

(武尊)

 

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