いよいよ迫る「2024年問題」TOPICS

2023年10月4日

2024年問題とは

「運転手不足で仕事を受注してもトラックを動かせなくて倒産するところが出てきた」(タイヤ専門商社審査担当)。こんな話も聞かれるなか、件の「2024年問題」が迫ってきました。

この問題は働き方改革関連法により、2019年から大企業で、2020年から中小企業で時間外労働規制が始まったことに端を発していますが、元来、長時間労働を前提としている建設や物流といった業種では対応に時間を要するとして、規制の開始が5年間猶予された経緯がありました。

そもそも、労働基準法で定められた法定労働時間は原則1日に8時間、1週間で40時間となっており、労使協定を結べば、月45時間、年360時間まで法定労働時間を超えて働くことができます。また、繁忙期や特別な事情がある場合には、特別条項付き36協定を結ぶことで実質的に上限無く時間外労働を行うことが可能となっていました。

働き方改革関連法では、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間とされ、臨時的な特別の事情があって労使が合意する場合でも、月100時間未満(休日労働を含む)、年720時間以内、複数月平均80時間以内(休日労働を含む)を超えることはできない旨、上限が定められています。

2024年4月から、この猶予期間がいよいよ終了し、建設や物流業界にも時間外労働の上限規制が適用されることになり、対応を迫られているわけです。テクノロジーの活用や業務の効率化を図るといった対策が進められているようですが、抜本的な解決には時間がかかりそうな様相です。

 

影響が大きい建設業界と物流業界

そもそも建設業界においては、他の業種に比べて従業者の高齢化率が高い傾向が見られ、一部では「若手の大工など滅多にお目にかからない」との声も聞かれています。技術を持つベテランが一気に定年退職を迎えれば、技術の継承が困難になる可能性に加えて、中小の建築業者などでは人手不足により事業の継続が困難となる場面も増えそうです。人手不足に規制強化が重なり、2025年の大阪・関西万博では、建設工事に遅れが出ると懸念する指摘もあります。

建設業界と同様に人手不足が深刻化しており、時間外労働規制の影響を強く受ける業界が物流業界です。自動車運転の業務は、特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間に制限されます。

 

原油高が直撃の物流業界には更なる試練

国の検討会では2024年問題に何も対策を行わなかった場合、営業用トラックの輸送能力が2024年には14.2%、2030年には34.1%不足する可能性があると試算されています。政府は「物流革新に向けた政策パッケージ」(内閣官房ホームページ)で具体的な施策として①商慣習の見直し、②物流の効率化、③荷主・消費者の行動変容を挙げています。この中でも、特に商慣習の見直しにおける運賃の適正化と荷待ち時間の削減は喫緊の課題でしょう。

荷主側も対策に動いており、異業種の企業の荷物を同じコンテナに混載する混載輸送や同業他社による共同輸送も拡大しています。また、警察庁も高速道路での大型トラックの最高速度引き上げの検討に入ったようですが、トラックドライバーの労働環境改善に寄与するかどうかは疑問だとの声も一部で聞かれます。

原油価格が高水準で推移するなど物流業界には厳しい状況が続く中、今回の時間外労働の上限規制が、増加傾向にある物流業界の企業倒産に拍車をかける可能性もあり、今後の動向が注目されます。

(ZBLV)

 

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