2026年7月14日
決算書の見方や財務分析について記載された書籍はたくさんありますが、与信管理目線に特化して、必要な知識を丁寧に解説したものは多くありません。この【与信管理における定量分析の基本】シリーズでは、与信管理の初心者が、決算書の見方やそのために必要な最低限の会計知識を含め理解できるように、詳しく解説いたします。第28回は「税務申告書の見方」と題して、取引先の法人税申告書を分析するための基本知識とチェックポイントを解説します。
トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。
>>第68回:取引先の税務申告書の見方①(2023年12月配信)
>>第69回:取引先の税務申告書の見方②(2024年1月配信)
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<目次> |
■法人税申告書とは
法人が各事業年度において納めるべき法人税を申告するための書類です。「別表一」と呼ばれる確定申告書の本体と、「別表二」以下の多数の明細書で構成されています。
法人税は企業の儲けに対して課せられる税金ですが、会計上の儲けである利益と税務上の儲けである課税所得は「似て非なるもの」です。法人税申告書の「別表四」は、会計上の利益をベースに、会計と税務が不一致となる部分だけ調整(加減算)して課税所得を求める調整プロセスを記載する書類です。
決算書と税務申告書の大まかな繋がりは、まずP/Lで求めた会計上の利益からスタートして、別表四で課税所得を計算、その課税所得をもとに法人税額を計算(別表一で示されます)し、最終的にはその法人税額がP/Lの「法人税等」に反映されて戻ってきます(B/Sの「未払法人税等」にも反映)。

■与信管理における法人税申告書の活用
中小企業の決算書については、債権者向けには儲かっている姿を決算書で示したい一方、儲けが出ると税務署に支払う税金が大きくなるので、このことが第三者のチェックがない中小企業の決算書をある程度適正なものとするインセンティブになっています。しかし、悪質なケースでは、粉飾した決算書を作成して銀行や仕入先に提示し、税務署には逆に本当の姿である赤字で申告したり逆粉飾して節税している可能性だってあり得ます。
そこで、取引先から決算書に加えてできれば税務申告書のコピーも徴求し、両者の整合性をチェックすることで、粉飾の有無を確かめる手がかりとするのです。明細書は全てもらうのが理想ですが、最低限、「別表一」と「別表四」だけでもコピーをお願いするとよいでしょう。「別表二」も株主が確認できるので貴重です。
■与信管理でチェックする主な別表
申告書には各種の別表がありますが、下表は与信調査目的で特に注目すべきものをピックアップしています。
| 別表番号 | 表題 | 説明 | チェックポイント |
| 別表一 | ー | 表紙。「確定申告書」の本体そのもの。事業内容や代表者名などの会社概要と、税額および申告内容のアウトラインが表示される。別表二以下は明細書という位置づけ | 税法上の儲けがでているか出ていないか、過去に欠損があるかどうか、法人税額等、多くの情報がダイジェスト的に読み取れる |
| 別表一(次葉) | ー | 別表一のつづきページ。法人税額及び地方法人税額の計算過程が記載される | 適用した税率、軽減税率などの適用状況を確認 |
| 別表二 | 同族会社等の判定に関する明細書 | 税法上の「同族会社」「特定同族会社」「非同族会社」の判定の状況が記載される | 商業登記では確認できない、株主情報が確認できる貴重な資料 |
| 別表四 | 所得の金額の計算に関する明細書 | 税務上の損益計算書のようなもの。会計上の利益から、税務上の所得への加算・減算の内容が記載される | 損益計算書との「当期純利益」と別表四の「当期利益」の不一致がないか確認。また、会計上の利益と課税所得との間に大きな乖離がある場合は原因を究明 |
| 別表五(一) | 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書 | 税務上の貸借対照表(純資産の部のみ)のようなもの。ここでの「利益積立金額」と「資本金等の額」の合計が税務上の純資産額となる | 貸借対照表の「利益準備金」「別途積立金」「繰越利益剰余金」「資本金」「資本準備金」と別表五(1)の同項目の不一致がないか確認 |
| 別表五(二) | 租税公課の納付状況等に関する明細書 | 「法人税、住民税及び事業税」の前期末計上分の納付状況や当期の中間納付の状況などが記載される | 前期末計上分や中間納付分の未納・延滞が発生していないか、加算税や延滞税などの発生がないか確認 |
| 別表七(一) | 欠損金の損金算入等に関する明細書 | 繰越欠損金の発生状況や残高、所得との相殺状況などが記載される | 繰越可能な期間の期限が迫っていないか確認 |
| 別表十一(一) | 個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 | 特定の債務者に対して貸倒れが見込まれる場合に、その債務者の名称やその債権に対する引当状況が記載される | 別表十一(一)が毎期のように添付されるということは、販売ルートが脆弱である証拠。十一(一の二)を含めて、引当金の繰入不足額(繰入限度額>当期繰入額)がないか、そのことによって会計上の利益を過大に計上していないか確認 |
| 別表十一(一の二) | 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書 | 個別引当を除いた一般債権に対する貸倒引当の状況が記載される。繰入限度額の計算方法は貸倒実績率か法定繰入率が用いられる | |
| 別表十四(六) | 完全支配関係がある法人の間の取引の損益の調整に関する明細書 | グループ法人税制における100%出資会社間の特定資産の売買状況や譲渡損益が記載される。該当取引については、損益を一時的にないものとして課税を繰り延べる | 100%子会社に固定資産や有価証券などを売却して、(税負担なしに)会計上の利益を捻出していないか確認 |
| 別表十六(一) | 旧定額法又は定額法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 | 別表十六関係は、減価償却対象資産の償却状況が記載される。別表十六(一)は定額法適用資産、(二)は定率法適用資産、(六)は繰延税金資産、(七)は少額償却資産、(八)は一括償却資産など、それぞれの明細書がある | 償却不足額(償却限度額>当期償却額)がないか、そのことによって会計上の利益を過大に計上していないか確認 |
| 別表十六(二) | 旧定率法又は定率法による減価償却資産の償却額の計算に関する明細書 |
※上記の別表番号および明細書の名称は、国税庁サイトに掲載されている『令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和8年4月1日以後終了事業年度等分)』に準拠しています。
■別表一
国税庁『令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和8年4月1日以後終了事業年度等分)』より「別表1」
●「税務署受付印」:申告書の真贋判定は、かつてはこの「受付印」があるかどうかで判別できましたが、今は電子申告が多く、その場合は受付印は押されません。
●「所得金額又は欠損金額」:別表四で計算された課税所得の額が記載されます。この額が「+」の値であればその年度は税務上の儲けが出た、「-」の値であれば損が出たことがわかり、「0」である場合は、その年度は儲けが出たが繰越欠損金と相殺されたということがわかります。
●「法人税額」:課税所得×税率。別表一(次葉)に詳細。
●「中間申告分の法人税額」:中間申告分の税額。
●「差引確定法人税額」:各種の税額控除や中間申告分を差し引いた納付すべき確定法人税額。
●「欠損金又は災害損失金等の当期控除額」「翌期へ繰り越す欠損金又は災害損失金」:欠損金の利用状況がわかります。詳細は別表七で確認できます。
●「剰余金・利益の配当」:その期の配当実績がわかります。株主資本等変動計算書の数値と一致するか確認します。
■別表四
国税庁『令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係(令和8年4月1日以後終了事業年度等分)』より「別表4(簡易様式)」
●「当期利益又は当期欠損の額」:まずこの額が、取引先の損益計算書の「当期純利益」の額と一致しているかどうかをチェック!ここが不一致ということは、損益計算書か税務申告書のコピーか、どちらかが虚偽である可能性。
●「加算」:「減価償却の償却超過額」「交際費等の損金不算入額」「貸倒引当金限度超過」などの課税所得の増加要因が記載されます。
●「減算」:「減価償却超過額の当期認容額」「受取配当等の益金不算入額」などの課税所得の減少要因が記載されます。
●「仮計」:加算と減算後の「仮計」をもとに寄付金の損金算入限度額が計算されます。
●「欠損金又は災害損失金等の当期控除額」:繰越欠損金から当期の所得といくら相殺したか確認します。
●「所得金額又は欠損金額」:計算された課税所得の額。
●「留保」と「社外流出」:「留保」に記載される金額は、翌期以降の所得計算に影響するもので、「社外流出」に記載される金額はその期で処理が完結するものです。最後の所得金額のところの留保の額が、税務上の内部留保となります。
■YouTubeでも詳しく解説!
本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっております。下記リンクのとおり、第68回・第69回が本ページの内容に沿った内容となっております。復習としてもご活用いただけますので、是非ご視聴ください。
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第68回:取引先の税務申告書の見方①(2023年12月配信)
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第69回:取引先の税務申告書の見方②(2024年1月配信)
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