2026年3月9日
今回から、連載シリーズコラム【知っておきたい 信用調査・与信管理のよろず知識】と題して、主に定性分析に役立つ知識を中心に信用調査や与信管理に関する様々な知識やノウハウをご紹介して参ります。なお、定量分析(財務分析)については、別の連載シリーズ【与信管理における定量分析の基本】で解説しています。
また、本連載シリーズは、トーショーの公式YouTubeにて配信している【シリーズ動画『信用調査・与信管理 よろず話』】ともリンクした内容となっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。
>>#01:与信リスクとは?信用調査や与信管理はなぜ必要?(2025年9月配信)
>>#02:信用経済の仕組み 締め支払い、間接金融、手形など(2025年9月配信)
>>#03:事例で理解!与信取引を利用した企業の資金繰り(2025年10月配信)
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<目次> ■信用とは? 与信リスクとは? |
■信用とは? 与信リスクとは?
最初に、そもそも企業の「信用」や「与信リスク」とは何かについて、ご説明したいと思います。
まず、「信用」の仕組みがない、純粋な“貨幣経済”では、モノやサービスの買い手が、売り手対して、その場で対価を現金で支払って、一切の取引を完結してしまいます。自分が持っている資金、つまり自己資金を超える取引は一切できません。
一方、現代の経済社会は“信用経済”が発達しています。信用経済では、売り手は買い手に、モノを先に渡して、買い手には後払いを認めています。例えば、AさんはBさんから材料を仕入れて加工し、Cさんに販売。そのあと、Cさんから回収したお金でBさんへ材料代を支払うというような取引も成り立つということです。つまり、元手は少なくとも商売をして、利益を上げることができ、「信用」があれば、自己資金を超えた大きな取引をすることも可能です。
国語辞書で「信用」という言葉を調べると、複数の意味があるなかで「現在の給付に対して、後日にその反対給付を行うことを認めること」(※引用『デジタル大辞泉』)と書かれていますが、簡単に言えば、「後払いを認めること」です。そして、これは「与信」と言い換えることもできます。
銀行でなくても、BtoBビジネスを営む事業会社では、商品やサービスを先に提供して、後から支払いを受けますから、後日に代金が回収できないリスクがあります。つまり、この「後払いリスク」が「与信リスク」ということになります。
したがって、与信取引を推進する場合には、後日にきちんと支払ってもらえるかどうか?取引先の支払い能力に問題がないか?という観点で慎重に見極める必要があるため、信用調査や与信リスクの管理が必要ということになります。
■信用供与(与信)の仕組み① ~「締支払いの商習慣」
次に、日本で発達してきた信用経済を支えるための、仕組みや商習慣などについての基本的な知識をご紹介します。
特に日本独特の信用取引の仕組みとして発達してきたのが「締め支払い」の商習慣です。これは、企業ごとに、請求の締め切り日と支払い日を定めて、特定の支払日に一括して後払いでお金を支払う仕組みです。
例えば、「月末締切りの翌月末支払い」という会社が多いと思いますが、「月末締めの翌々月末払い」や、「20日締め翌月20日払い」など、業界や企業ごとにそれぞれ異なっています。

例えば、得意先が指定する決済条件が「月末締め翌月末払い」という場合で、9月1日に1000万円分の商品を納入し、9月10日に400万円分を追加で納入し、さらに、9月20日にも600万円分の商品を納入したとします。そうすると、一連の取引に関する請求は9月末を締め切りとして合計2000万円を、1か月後の月末、つまり10月末に一括して回収するということです。
さらに継続取引で、例えば10月5日200万円分納品、10月20日に500万円分納品すると、次は11月末に10月分の取引の700万円をまとめて回収する形となります。
そして与信リスクの観点では、例えば、10月の月末あたりにこの得意先が倒産した場合、合計2700万円が回収不能となりますから、この得意先の支払い能力を事前にきちんと調査しておかないと、非常に危険であるということがわかると思います。
それで、このような「締め日」、「支払い日」の商習慣というのは、世界ではほとんど行われていないそうです。例えば「NET30」という条件では、請求書の日付から30日後に支払ってくださいという意味になりますが、このような形をとる国が多いようです。つまり、取引が発生するごとに毎日のように請求して、支払いも30日後ですから、毎日のように支払期日が到来するという感じです。
一方、日本では支払日は基本的には月に1度だけでとても厳格ですから、1日でも支払いが遅延したら、倒産に直結するような深刻な信用不安を惹起することがあります。
■信用供与(与信)の仕組み② ~「銀行借り入れ」(間接金融)
また、「銀行借り入れ」が、中小・零細企業も含めて一般的であるということも、日本の信用経済の発達基盤になっていると思います。
| 欧米(特にアメリカ) | 伝統的に直接金融が浸透 | 「株式」「社債」など資本市場から調達がメイン |
| 日本 | 伝統的に間接金融が浸透 | 簡単に言えば「銀行借り入れ」のこと。日本の会社は、「借金」が多い。裏を返せば「借金」ができる経済といえる |
表のような比較がよくなされますが、欧米、特にアメリカでは直接金融が中心だということが言われています。一方、日本で銀行借り入れは、かなり零細な企業においても、利用が浸透しています。
■信用供与(与信)の仕組み③ ~「手形」「電子記録債権」
「手形」も日本で長年にわたって浸透してきた与信取引の仕組みです。手形は、約束手形、為替手形があり、為替手形は国内取引では、近年ほとんど使われなくなっています。

紙の手形については、現在、政府が「手形・小切手機能の全面的な電子化」政策を推進し、2026年度末までに紙の手形利用を廃止する方向性で、取り組みが進められているため、約束手形は近い将来ほとんど流通しなくなると予想されます。ただし、手形とほぼ同様の仕組みとして「電子記録債権」というものもあり、こちらは今後も利用されていくはずです。
約束手形は、簡単に言えば「手形の上に書いてある支払い期日に、書いてある金額を支払うことを約束した文書」のことです。手形は有価証券の一種ですが、その性質から「信用証券」と呼ばれます。余談ですが、小切手は信用機能はありませんので「支払証券」と言われます。
手形の要件は「手形法」という法律で定められていますが、これとは別に金融機関の間でのルールとして、手形の「不渡り」には厳しい制裁措置が定められており、6か月以内に2回の不渡りを出すと、銀行取引停止処分といって、金融機関との当座預金取引・貸出取引が2年間できなくなります。銀行取引停止処分になると、商取引の継続が困難になることから、多くの場合で企業は実質的な倒産状態に陥ってしまいます。電子記録債権の一種である「でんさい」も、同様に、2回の支払い不能で、取引停止処分という同様の仕組みがあります。
■まとめ 信用調査・与信管理の必要性
上記のとおり「信用」の仕組みを利用した「与信取引」は、元手以上の取引を行うことができ、経済社会の発展にとって非常に有意義なものですが、取り扱い・管理に不備があれば企業経営にとって大きなリスクが顕在化することもあります。まさに「諸刃の剣」と言えるでしょう。
信用を供与する側は、「信用調査」や「与信管理」の徹底を、信用を供与される側も「資金繰り」に細心の注意を払うなど、十分なリスク管理が必要ということになります。
■YouTubeでも詳しく解説!
本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【シリーズ動画『信用調査・与信管理 よろず話』】ともリンクした内容になっています。動画解説では、さらに詳しい説明や事例解説も含まれていますので、以下のリンクから3本の動画を是非ご視聴ください。
>>#01:与信リスクとは?信用調査や与信管理はなぜ必要?(2025年9月配信)
>>#02:信用経済の仕組み 締め支払い、間接金融、手形など(2025年9月配信)
>>#03:事例で理解!与信取引を利用した企業の資金繰り(2025年10月配信)
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