2025年6月4日
企業信用調査を担当する筆者が、最近の調査取材のなかで、特に印象に残った事柄について、思いつくままに書き記してみたいと思う。
企業再生のプロ?
2年ほど前に、「企業再生のプロ集団」と言われるグループが事業承継した、とある中小企業を調査取材したが、その企業は数ヶ月後にあっさりと営業停止に追い込まれてしまった。どうやら、彼らは企業再生のプロではなく、企業に吸血して資金を引き揚げる詐欺集団だったようだ…。
最近はM&A市場が活況だが、このような後継者問題につけこんで買収し、貯めこんだ資金を狙う輩も中には存在する。もちろん、大半のケースは真っ当に事業再生を志して買収しているが、判断に迷うケースも出てくる。
先日取材した、とあるアパレル関連業者A社も、最近になってM&Aでオーナーチェンジがあった企業だ。新たな親会社は、僅か2年の間に20社以上を傘下に収めているが、買収先の業種の一貫性に疑問符が付くものもある。取材から数ヶ月が経った頃、グループ企業の1社が営業停止したとの情報に接した。身売りしてからわずか半年後のことである。A社の今後が気がかりだ。
企業理念の浸透が感じられた企業
話は変わって、幼児向けの製品を販売するB社の取材での一コマ。この業界も、少子化の影響で、どこも経営環境は厳しい。B社は、以前に受けた信用調査に対する不信感から、ある頃より決算書は非開示になっている。よくあるケースだ。しかし、具体的な数字以外は何でも教えてくれるので、一応の形にはなりそうだ。
一通り取材が終わった後の雑談が印象的だった。「今朝ニュースで、幼稚園に給食を提供する会社が倒産したんだって?業界は違うけど、何とかならなかったのかなって思ったよ。子どもたちが被害を受けるのはいたたまれないね…」
B社の社員は子育て世代が多く、時短で働くパートも多い。企業理念にも、子供たちを大切にする思いが謳われている。本当に子どもが好きでないと、良い商品は作れないのだろう。筆者も小さな子供を持つ親として、印象に残った取材先であった。
与信管理の重要性を理解していれば・・・
代替わり後に倒産した構造不況業種のC社。同社は過去何度かの危機を乗り越えてきたが、コロナ禍による近時の事業環境の急激な変化によって、業績は再び悪化していた。
実父から承継した新社長が就任直後に、C社を訪問取材した。その際、以前から焦付きが多発しているので与信管理について聞いてみると、「調査会社の評点を見るくらいですね」との回答であった。その後、焦付きが立て続けに起こる不運も重なり、事業継続を断念、自己破産を申し立て倒産してしまった。
取材時、過去の不良債権発生が経営を圧迫していたなか、新社長の与信リスク意識の希薄さには、一抹の不安を覚えたが、悪い予感が現実のものとなってしまった。
趣味が調査取材の突破口に
最後に、筆者の趣味の話が役に立ったD社取材での出来事。取材のアポを取ってみたが、依頼主を明かさないなら開示できる情報は限定的とのこと。守秘義務があるため、当然依頼主は明かせないが、可能な限り情報を引き出す努力はしてみる。
しかし、警戒感が強く、何を聞いても「話せることはありませんね」の一点張り。決算書の開示はおろか、売上数字すら教えてくれない。埒が明かないので、諦めて雑談して帰ることにした。
「そういえば、御社が主催する○○マラソン大会に申込みましたよ」 何気なく話したところ、相手の表情が変わった。参加基準が厳しい大会だったので、驚いたようだ。フルマラソンの持ちタイムを聞かれたので3時間は切っていることを伝えると、予想外の言葉が出てきた。
「せっかく来ていただいたので、何か1つだけお話しましょう」 さっきまでとは態度が明らかに違っていた。D社は全社員マラソンをやることが必須となっているため、フルマラソンで3時間を切ることの大変さを分かっているからであろう。
今後も“足”を使って情報を集めていきたい…。
(武尊)
■ トーショーは企業の“変化”を捉える定性情報をご提供
トーショーでは、与信管理に欠かせない「定性情報」を収集・提供しています。抜群の情報収集力と長年にわたって蓄積されたデータベースから、お客様の与信管理ニーズに応じた配信形式でご提案いたします。
■ 財務分析から定性的な情報まで、トーショーの企業信用調査で情報収集を
企業信用調査もトーショーにお任せください。お客様の指定事項をカバーするオーダーメイド調査により、数多くのお客様から高い評価をいただいています。