2025年5月8日
決算書の見方や財務分析について記載された書籍はたくさんありますが、与信管理目線に特化して、必要な知識を丁寧に解説したものは多くありません。この【与信管理における定量分析の基本】シリーズでは、与信管理の初心者が、決算書の見方やそのために必要な最低限の会計知識を含め理解できるように、詳しく解説いたします。第14回は「与信管理担当者のための簿記知識(その3)」と題して、簿記の仕訳について具体例を提示しながら解説します。
トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっておりますので、あわせてご覧いただきますと、より理解が深まります。是非ご視聴ください。
>>第40回:簿記知識編その5:期中仕訳③(有形固定資産、借入、諸費用)
>>第41回:簿記知識編その6:期中仕訳④(貸倒れの発生、純資産)
<目次> ■期中取引の仕訳例:有形固定資産 |
■期中取引の仕訳例:有形固定資産
有形固定資産は、土地や建物、設備などが代表例です。固定資産は長期にわたって使用収益しますが、土地などを除き耐用年数に応じて徐々に価値が減少していくと考えます。減価償却費という費用を毎期の決算手続で計上して帳簿価格を減じていきます。減価償却の詳細については今後の決算整理の仕訳の回で説明します。
「工場用地を4000万円で購入し、代金は小切手で支払、不動産会社への仲介手数料150万円は現金で支払った」。下の仕訳を見てのとおり、固定資産の取得原価には付随費用が含まれていることになります。
「取得価額3000万円、現在の帳簿価格が1000万円(累計の減価償却費は2000万円)の建物を売却し、代金の1200万円は月末に受け取る」。下に示す2つの仕訳は同じ取引についてのものですが、上と下の違いは、減価償却の記帳方法の違いによります。上は減価償却費を固定資産の帳簿価格から毎期直接控除する方法(直接法)で記帳している場合の仕訳で、下は「減価償却累計額」という勘定を用いて間接控除する方法(間接法)を採用している場合です。減価償却累計額は資産のマイナス項目で特殊な勘定です。ちょっと難しいですが、ご参考まで。
帳簿価格と売却価格の差額で損が出る場合は“左”側に「固定資産売却損」という費用の勘定を使います。
■期中取引の仕訳例:借入れ
借入金についてはあまり説明は必要ないとは思いますが、要するに借金です。返済までの期間が1年以内のものは「短期借入金」、1年超のものが「長期借入金」です。もともとは長期借入金でも、決算日の時点で返済期日まで1年以内となったものは、決算手続で「短期借入金」や「1年以内返済長期借入金」に振り替えます。
「銀行から返済期間6カ月の契約で、2000万円を借入れ、当座預金に入金された」
「6カ月前に借り入れた2000万円を、利息30万円と併せて当座預金から返済した」。利息は費用です。
「工場の生産設備購入のため、銀行から借入期間5年の契約で5000万円を借入れ、普通預金に入金された」
■期中取引の仕訳例:いろいろな費用
会社経営では「仕入」以外にも、様々な費用が発生します。仕訳のイメージをつかむために、以下にいくつかの仕訳例を列記してみます。
「事務所の1か月分の電気料金10万円分を、普通預金から支払った」
「スタッフに海外出張費用の概算20万円を、出張前に事前に現金で渡した」⇒ 後日「スタッフが出張から戻った。実際にかかった費用15万円であったため、5万円を会社に戻した」
「事務所の向こう1年分の家賃300万円を小切手を振り出して支払った」という場合の支払時の仕訳は以下のとおりでOKですが、仮に決算期まであと9か月という状況の場合は、通常は費用収益対応の原則で9か月分は当期の費用、3カ月分は来期の費用とする必要があり、それは決算整理仕訳によって処理します(今後解説)。
■期中取引の仕訳例:貸倒れの発生
与信管理を担当する人にとって「貸倒損失」は、最も関心の高い勘定科目かもしれません。貸倒れが発生した場合、それが前期以前に発生した債権の貸倒れなのか、今期に発生した債権が貸倒れたのかによって処理が違うことを知っておきましょう。
貸倒発生時の処理の違い ◆当期発生債権が貸倒れた場合 … 「貸倒損失」という費用を発生させます。当期の業績に予定外の悪影響を及ぼします。 |
「貸倒引当金」は特殊な勘定科目で、資産のマイナス項目です。毎期の決算手続で計上します。その決算整理仕訳については今後の決算整理仕訳の回で説明します。
「販売先が倒産し、当期に売り上げた500万円が回収不能となった」
「販売先が倒産し、前期の売り上げに伴い発生していた売掛金500万円が回収不能となった。その時点で貸倒引当金の残高は300万円残っていた」
■期中取引の仕訳例:純資産
新株発行
以前の回(貸借対照表の解説)で説明しましたが、株式を発行した場合は原則として払い込まれた全額を資本金に計上しますが、払い込まれた額の2 分の1 を超えない額を、「資本金」ではなく「資本準備金」として計上することもできます。
「会社設立にあたり、株式400株を1株あたり5万円で発行し、出資金が普通預金に払い込まれた。そのうち、2分の1は資本金に組み入れないこととした」
剰余金の配当
会社法の規定で「剰余金」から配当をする際に配当額の10分の1を準備金に積み立てる必要があります。資本剰余金から配当した場合には「資本準備金」に、利益剰余金から配当した場合には「利益準備金」に積み立てます。準備金の合計額が「資本金」の額の4分の1に達していた場合は、この積み立ては必要ありません。
「定時株主総会において、利益剰余金からの配当100万円、利益準備金の積み立て10万円が決議された」。決議時点では、まだ配当が支払われていませんので支払義務を「未払配当金」という負債勘定で処理しておきます。
■YouTubeでも詳しく解説!
本ページの内容は、トーショーの公式YouTubeにて配信している【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】ともリンクした内容になっております。下記リンクのとおり、第40回・第41回が本ページの内容に沿った内容となっております。復習としてもご活用いただけますので、是非ご視聴ください。
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第40回:簿記知識編その5:期中仕訳③(有形固定資産、借入、諸費用)
>>【スキマ時間で!無料で!マスターできちゃう動画シリーズ『取引先の決算書 定量分析の知識』】第41回:簿記知識編その6:期中仕訳④(貸倒れの発生、純資産)
■トーショーは企業の“変化”を捉える定性情報をご提供
トーショーでは、与信管理に欠かせない「定性情報」を収集・提供しています。抜群の情報収集力と長年にわたって蓄積されたデータベースから、お客様の与信管理ニーズに応じた配信形式でご提案いたします。
> 企業信用情報のサービス紹介はこちら
> 資料ダウンロード・資料請求はこちら
■財務分析から定性的な情報まで、トーショーの企業信用調査で情報収集を
企業信用調査もトーショーにお任せください。お客様の指定事項をカバーするオーダーメイド調査により、数多くのお客様から高い評価をいただいています。