債権譲渡登記をどうみるか?TOPICS

2022年10月6日

債権譲渡登記とは?

債権譲渡登記制度とは、「法人がする金銭債権の譲渡などについて、簡便に債務者以外の第三者に対する対抗要件を備えるための制度」(※法務省webサイトより)です。

具体的にどのような場面で、債権譲渡の登記がなされるかといえば、かつては資金繰りに支障をきたし、“虎の子”の売掛金を窮余の策として債権者に差し出すというような、緊迫した状況においてその登記がなされるというケースが典型的でした。

 

かつては登記が信用不安に直結した時代も

それは、日本の慣行では不動産担保が一般的であり、売掛金や在庫など流動資産を担保に差し出すというのは最終手段とのイメージがあったためです。債権譲渡の登記が商業登記の登記事項であった時代には、それが多くの利害関係者の目に触れることによって信用不安を余計に惹起してしまうという問題も起きていました。

しかし、近年においては資金調達方法の多様化とともに、売掛金を担保にお金を貸すABL(売掛金担保融資)も、金融機関の融資手法として浸透してきており、一概に取引先の緊迫した危機を示すものとは言えなくなりました。

とはいえ、やはり緊急的な保全の目的でなされる場合も当然あり、また譲受人が金融機関以外である場合には、正規の取引金融機関からの資金調達に支障をきたしているシグナルである可能性もあるため、与信調査において債権譲渡登記を確認することの重要性には変わりがありません。

 

債権譲渡登記の譲受人は、ノンバンクやファクタリング会社が目立つ

弊社トーショー調べになりますが、2022年6月までの1年間の債権譲渡登記の債権の譲受人を分類したところ、把握された計7979件のうち、銀行や信用金庫などの金融機関が約38%、ノンバンクやファクタリング会社が約54%、その他の事業会社が約7%で、あとは個人が若干数となっていました。

譲受人の割合円グラフ

ノンバンクやファクタリング会社が過半をしめていますが、それがどのような状況においてその登記がなされるかといえば、一つは貸金業法の規制のもと登録された貸金業者が売掛債権を担保として融資する、いわゆるABLを実行する際に、その業者を譲受人として登記されるケースがあります。当然、銀行や信金が行うものよりも金利は高いと想定されます。もう一つは、ファクタリング会社を譲受人とした債権譲渡登記ですが、これが非常に多くなっています。

 

二者間ファクタリング利用の手数料は高い

ファクタリングとは、簡単に言えば手数料を差し引いて売掛金を換金してくれるサービスです。大手銀行系ファクターが提供しているような債権保全目的の「保証ファクタリング」という手法もありますが、債権譲渡登記で多くみられる独立系のファクタリング会社が提供するのは「買取ファクタリング」と呼ばれるサービスです。

手形割引の売掛金版と言えば理解しやすいですが、手形割引と違ってノンリコース(非遡及)でありファクタリング会社は譲受債権が回収不能になっても、譲渡人へ請求しません。そのため、ABLや手形割引とは異なり貸金とはされていません。

これらの業者の多くが「二者間ファクタリング」という手法を多く用いており、これは売掛先に知られることなく資金調達ができるものです。ファクタリングは利息制限法などの規制を受けませんから、手数料はそれなりに高いものが多いようです。また、実態は売掛金担保融資なのにファクタリングを偽装し、実質金利が年率300%を超えているようなものもあり、近年悪質業者の逮捕事例も出ています。

 

債権譲渡登記がなされたらその背景を確認

いずれにしても、個別の債権譲渡登記がなされた理由は、それぞれきちんと確認をとらなければわかりませんが、与信管理担当者としてはそれがなされる典型的なパターンとして、上記のような実態があることも押さえておくべきでしょう。

(ケロス)

 

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